「近江富士」かわら版

近江富士、四季の風景 ■「穂高から三上山まで」---わたしの山と写真---連載中

2008年06月14日

野洲川



写真拡大■湖南市吉永。野洲川新生橋から。右手前半分ほどに見える山は十二坊・岩根山です。高校生らしいグループが、テンとを広げて川原でなにかを始めています。


◆朝日新聞週刊情報誌「あいあい AI 滋賀」(毎週水曜日発行)に写真シリーズ ”三上山物語” を連載しています。・・・5月14日号スタート、約1年間の予定です。


■ 穂高から三上山まで
--------わたしの山と写真--------


   
 034.烏帽子・三俣蓮華・笠ヶ岳
    4.葛温泉から烏帽子小屋まで・C

 第2日(8月6日)

 ブナダテ尾根の登りが続く。 


写真拡大 時計が12時を指す。「とうとう12時までに着けなかったか、残念!」と、足元を見ると、四角い石があって、それが三角点。「ヤッタ!、予定通りや!」。
 普通、三角点というと山の頂上に鎮座していて、山に登るとき、三角点はその山の頂上を意味するわけだが、今の三角点はそんな結構なシロモノではない。ブナ立て尾根の一つの点を示すだけで、標高2208m、烏帽子岳自体は2628mあるわけだから、全体の3分の2が終わっただけで、単なる通過点に過ぎない。





写真拡大 三角点から少し登って、右側に大きなガレ場が見える場所で昼食をとる。そこへ5人のパーティーが登ってきて、「三角点はまだですか」という。彼らも見過ごしてきたらしい。「もう過ぎましたよ」というと、「しまったー!」、「引き返そうや」という。三角点の写真でも集める趣味でも?、そうでなければ、こんなしんどい坂を誰が引き返すものか。
 と不思議に思って聞いてみると、問題は三角点ではなしに、水場。三角点を少し右に下りたところに水場があることを知っていて、それを頼りに登ってきて、知らぬ間にそれを通り越してしまったというわけ。なんとも泣きたくなるくらいナサケナイ。気持ちは分かる。

 薄いガスの巻く中を、なおも汗を聞きながら登る。ときどき木の間がまばらになり、空が抜けるようになる。そのたびに、そこが稜線かと期待する。何回かの失望を繰り返した後、小さな標識にいわく「小屋まであと15分」、じゃ休め、水も全部飲んでしまえ!。

写真拡大 少し行くと、本当に空は抜けて、這松と高山植物の中に出る。時に13時46分、濁沢の取りつきから4時間46分、葛温泉からすれば、休憩を含めて、8時間16分のアルバイトだった。 





写真拡大 小屋に着いたら、「水はないから、水場まで汲みにいってくれ」という。小屋から約15分、烏帽子よりのところにあるというので、烏帽子に登るついでに汲みに出る。
 なだらかな白砂の稜線を烏帽子に向かう。小さなイワギキョウが点々と咲いている。ちょっと燕を思わす岩肌である。

写真拡ガスに巻かれて、どれが烏帽子なのか分からず、小屋へ着いたのだという気分のゆるみと、行っても行かなくてもどちらでもいいという気持ちから、かなりの披露を感ずる。何回あやめて帰ろうかと思ったが、最後に登り切ってしまう。
 2627mのさして高くもないこの岩峰は定員一人。危なくて立つことはできない。ガスが巻いて視界は全くきかない。雨の心配もあるのでそうそうに引き上げる。





写真拡 水をくんで、4時、烏帽子後や帰着。出るときはすいていた小屋も、そのときはあふれんばかり。例のオッサンも着いていた。
 5時頃から夕立がやってくる。その晴れ間を見て、近くの小高い台地まで行く。夕焼け空の中に、三つ岳が立ちはだかり、その中腹を明日の縦走路が登っていく。

 夕食が終わると山小屋は就寝の時間。肩と肩とを合わせて人間サンドイッチ。窮屈なのと、暑いのとで眠れずにいると、左手の窓が明るくなって月が昇ってくる。小さな窓から見る高山の月。あたりの景色が見えないので、雄大だとか、神秘だとかの形容詞はつけられないが、地上で見るときとは鮮明度が違う。

 そういえば、仁木多喜雄作曲の「高原の月」というのがあったなー。

  真白に高き雪の峰/浮世のちりに染まぬ花/
  清き世界を照らしゆく/ああ高原の月 なに思う

 そんなことを考えつついつの間にか眠ってしまう。




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八田正文
1976年以来、30年にわたって近江富士・三上山の写真を撮り続けてきました。その三上山の姿を新旧とりまぜて・・・。 「穂高から三上山まで」・わたしの山と写真、連載中。こちらもよろしく。
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