「近江富士」かわら版

近江富士、四季の風景 ■「穂高から三上山まで」---わたしの山と写真---連載中

2008年06月30日

あじさい



写真拡大■守山市矢島町。法竜川の上流、田圃の縁に咲いていたアジサイ。








■ 穂高から三上山まで
--------わたしの山と写真--------


   
 050.秋の穂高
    3.第2日(10月1日)、徳沢園から涸沢まで。


写真拡大 ガスの下からかすんだ山の姿は見えるが、始めての道では、それがどのあたりなのか、判断すらできない。

 新村橋に出る。地図をとりだしてみたが、持っていった5万分の1の地図には載っていなかった。


写真拡大 屏風岩が見えてくる。初対面だが、雑誌その他で、いやというほどお目にかかっている。横尾は近い。

 横尾本谷に入るのに、近回りをしようとして流れを渡る。足がすべって水の中へどぼん。雨の中で座り込んで、靴を脱いで水を絞る。

 屏風岩の麓あたりで、ガスに煙りながら、黄葉が見え出す。スゴイ。しかし、雨は止まない。



 10時半、本谷・丸木橋着。涸沢への本格的な登りはここから始まる。雨はますます激しくなる。この雨は止まないだろう。横尾まで引き返そうかと思う。雨の中をたった一人で登るのがみじめだった。

 そんなとき、大きな荷物を背負って前を歩く男に気がついた。その男を追い抜いた。明るいガレ場に出た。持っていったサンドイッチを食っていると、先程の男が登ってきて、「かなりばてますね」と、その男も腰を下ろす。何かごそごそやっていたが、「2060mですね」という。高度計を持っているらしい。聞けば、どこかの大学山岳部の先発隊だという。

 地図をとりだして、歩いている道と2060mの等高線の交点を探す。屏風岩を大きく巻いて、さらに大きく右へ曲がりきったところだった。涸沢ヒュッテまで標高差にして200mほど。いつの間にか、意外と登ってきていたことになる。

 1時少し前、涸沢ヒュッテ着。山全体が黄金色に色づいていた。身につけているものは全部ぐしょぐしょに濡れていた。入り口を入ったところの小さな部屋で、ストーブが燃えていた。小屋の男が、「こんな雨に登ってくるのは邪道だ」ととかなんとかいいながら、濡れたものをストーブの上につるす方法を教えてくれた。

 2060mの男は、涸沢ヒュッテにはこなかった。そのまま奥穂まで登ったのかも知れない。ストーブのない広い部屋に一人でいると寒かった。雨は降り続いている。こんなところであと半日どないせーちゅーね。夏の満員も困るけど、こんな寒いところでたった一人も困りもんやで・・・。

 と、ぼやく相手もいないまま、壁にもたれてウトウトして、ふと目が覚めた。人の話し声がする。それも一人や二人ではない。そうする間にも人は続々と入ってくる。夏と同じである。どこから沸いてきたのという感じ。人いきれでむんむんしてくる。先程の寒さがウソのよう。耳を澄ませば、周りは全部全部関東弁である。

 連休なのは自分だけで、世間様では連休でないはず。こういうところで、関西弁でしゃべるのは気が引けるが、勇気を出して近くにいたネエちゃんに聞いてみた。「みなさん今日はお休みだったんですか?」・・・。向こうも、けったいなニイちゃん、何いうてんのと思ったはず。・・・きょとんとした顔をして、「そうだよ、10月1日は東京の学校全部休みだよ!」。・・・?はよいえ、それを。ワシは自分だけが連休やと思って来たんやぞ。もう二度と10月1日は山へは来んぞ。それにしても、東京の学校が全部休みになると、涸沢へこんなにアホほど人間がくるのか。どれだけ人間がおるのや、東京には。

 と、今日もまたかくてありなん。・・・ああ、今夜もメザシか。それも頭と足を互い違いに逆に並んで寝てくれという。メザシは頭がすべて同じ方を向いている。その間に、頭としっぽを逆にしたのを詰め込むのである。横を向けば、すぐ目の前に隣のヤツの足がある。夏の三俣蓮華もひどかったが、ここまでではなかった。とにかく、忍の一字で、朝が来るのを待つ。
 
 誰かが外へ出てきたらしい。「いい月だよ。前穂の上に出ている。きれいよ」。雨は止んだらしい。前穂の上の月を見たいのだが、自分一人では、抜け出したが最後、二度と戻るスペースはないだろう。外へ出るには、最低3人が必要。両側の2人が、抜け出した真ん中の1人の場所を死にものぐるいで守るのである。







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八田正文
八田正文
1976年以来、30年にわたって近江富士・三上山の写真を撮り続けてきました。その三上山の姿を新旧とりまぜて・・・。 「穂高から三上山まで」・わたしの山と写真、連載中。こちらもよろしく。
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