「近江富士」かわら版

近江富士、四季の風景 ■「穂高から三上山まで」---わたしの山と写真---連載中

2008年07月22日

家庭菜園



写真拡大■栗東市六地蔵。旧東海道付近の家庭菜園。カメラの後ろが旧東海道。前方の民家沿いをJR草津線が走る。







■ 穂高から三上山まで
--------わたしの山と写真--------


072.雪の西穂高・1(1962年3月)
    ・・・といっても、山荘までですが・・・。

 職場の先輩のAさんが、3月に西穂高へ行こうという。といっても山荘までだが、いとこのBさんが栃尾にいて、「つれて行ってやる」というから、行かへんかという。山荘までといっても、3月はまだ冬ですよ。と、多少は抵抗はしてみたものの、連れて行ってもらえるなら、この際・・・ということで。


写真拡大1962(昭和37)年3月25日(日)
 あと旬日で桜も咲こうかという早春の日、雪の穂高に心を寄せて、京都を発つ。8時03分発、準急”第1伊吹”。暖房のきいた車内から見る明るい風景、冬はどこにも見あたらない。これで山の上に雪があるなど信じられない。途中若干の遅れはあったものの、たいしたこともなく岐阜着。

 10時17分の高山行各停に乗り込む。飛騨金山で、対行列車待ち約7分、ストップ。高山でのバス連絡は12分しかない。「大丈夫かな?」。まだ5分あるから大丈夫やろう。田舎のバスやから、ちょっとぐらいなら待ってくれるやろう。
 飛騨小坂。対行列車待ち、20分だという。これはアカンで。

 結局、高山へは、17分遅れの14時35分に着く。バスの高山発は14時30分。何とか待っていてくれないかと、地下道を急ぐ。しかし、めざす神岡行きはいなかった。

 次のバスは15時30分である。これは待つしか手はない。栃尾までの切符を買おうとすると、「次のバスでは、ミザまでしか行きませんよ」という。「ミザ?、ミザてどこ?」。「ここです」、手際よく路線図が出てくる。見れば、「見座」とある。「ウン、それで、見座でどこ行きに乗り換えたらいいの?」。「乗り換えはありません」。「?、・・ありません・・・て、じゃ、栃尾へはどうしていけばいいの?」。「きょう中には行けません・・・」。「なに?・・・」。「それをはよいえ」とはいわなかったが、夜の9時、10時ならともかく、まだ午後3時やで。どないせーちゅうねん。

 ぼやいていても仕方がない。Aさんが電話でBさんと連絡。と、書けば当たり前の話になるが、当時、どうして電話連絡が取れたのだろう。公衆電話から市外通話ができたのだろうか。固定電話からでも、いったん電話局を呼び出して、どこそこのXX番と相手の番号を伝え、そこでいったん電話を切って待つ。数分、ないし数10分待って、やっとつながるといった時代である。公衆電話からはそんな芸当はできない。ひょっとして、事務所かどこかの電話を借りたのではなかったか。

 Bさんは「とにかく見座まで来てくれ、そこまで車を回すという」。これも今の感覚では、ああそうかという感じだが、そのころは個人が自家用車を持つ時代ではなかった。といって、タクシーを頼めばべらぼうな金額になるはず。Bさんが近くの会社か何かに頼んでくれての話だったのだろう。

 ということで、とにかく15時30分発の神岡行きに乗る。17時10分、神岡着。神岡は意外に大きな街だった。山の中に想像もできない舗装道路の街、パチンコ屋、喫茶店、洋品店、バーetc。都会にあるものは一通り皆そろっている。次の見座行のバスは18時30分だという。うどんを一杯食ってしまうと、あとはすることがない。寒い鉱山の街を歩き回った。
 街のすぐ横が鉱山だった。山を半分つぶしたような露天掘りの鉱山にライトが煌々とともって、さながら不夜城のごとし。神通川流域のイタイイタイ病など、名前も知らないころである。神岡と聞くと、このときの記憶がよみがえる。

 18時30分、神岡発。日もとっぷりと暮れ、ネオンや店の灯りがやけに明るい。途中どのあたりだったか、道路工事のため徒歩連絡。街灯もない真っ暗な悪路を200mばかり歩く。よく晴れた夜空にオリオンが輝いていた。

写真拡大 見座、19時10分。店が一軒あるだけの暗いところである。さてどうするかと思っていると、Bさんに声をかけあれ、ほっとする。蒲田川沿いの道をさらに車で40分ばかり、栃尾へ着いたのは、20時ちょうどだった。思えば、京都から12時間。長い旅だった。




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八田正文
八田正文
1976年以来、30年にわたって近江富士・三上山の写真を撮り続けてきました。その三上山の姿を新旧とりまぜて・・・。 「穂高から三上山まで」・わたしの山と写真、連載中。こちらもよろしく。
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