2015年12月01日
桑実寺

ちょうど半分ぐらい登ったところで、上から下って来る人が見えた。最初は参拝客かと思ったが、歩き方が全く違う。テンポが一定なのである。国会用語ではないが粛々と一定の速さで下ってくる。白装束だったのでご住職かとも思ったがそれも違う。近づいてよく見ると荷役の方だった。
その昔北アルプスで見た荷揚げの様子を思いだした。昭和30年代前半、山小屋への荷揚げはすべて人の手だった。私たち、20歳代前半の若いものがフーフー言ってバテているのを尻目に、背中から頭を越す大きな荷物を担いで、息一つ乱さずに淡々と通り抜けていったボッカの人たち。神業に見えた。「ボッカ」などと呼び捨てにできるものではなかった。その神さんが半世紀越しに目の前に現れた思いだった。登り口で見た道路が解決策かと思ったが、どうもあの道は桑実寺とは無関係なようだ。まだ当分この仕事は続くのだろう。
その神さんが通り過ぎた後を見上げると、あたかもスサノオの命が鉈を振り下ろしたかと思われる深い谷の向こうに、遠く三上山が一人、凛として立つのが見えた。
写真ステージ 「近江富士」
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Posted by 八田正文 at 07:46│Comments(0)
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