人間の業

落差工から100mほど上流へ移動したところである。穏やかな流れの中をカモが遊んでいる。全部で4羽いたが、3羽はさっと飛び立ってどこかへ行ってしまった。鳥の人間に対する敏感さは何なのだろう。川に近づくときはできるだけ足音を立てないようにそーっと歩くのだが、こちらが鳥の姿を見る前にやつらは飛び立ってしまっている。水中にいるのなら、振動が地面から水を伝わってということも考えられるのだが、そういうことでもないらしいし。人間の長年の業か。
いまはもう長浜市になっているはずだが、小谷城址の東側、須賀谷温泉の近くに西池という小さな池がある。野鳥観察設備があって、そこにいる水鳥は人間が行くと近寄ってくる。この違いは何だろう。結局長年培われた関係か。鳥に対して嫌われるほどの酷いことをした記憶もないのだが。
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落差工

祇王井川と童子川とを結ぶ中の池川の落差工である。野洲市総合体育館前の田んぼの中にある。何日か前、京都新聞に「ビワマス戻れ、魚道設置」として、この落差工にNPO法人「家棟川流域観光船」や県、市、地元自治会などでつくるプロジェクトチームが魚道を設置したと報じられていた。上流の祇王井川までビワマスを導こうというのが目的だという。久しぶりの現場だったが、付近には樹木が増えてそれなりの雰囲気に変わっていた。しかし落差工そのものを撮るとなると影ができて難しい状態になっていた。
標題写真、水路が斜面になっているところ、右端が魚道だが木の陰になって暗くなっている。落差工だけを望遠でアップしたのがこの写真。さらに魚道だけをアップした。人間の石段と違って仕切り板を斜めにセットして、低い部分に水が集中するよう調整してある。なるほどなーと感心。記事では、”活動に参加する住民や市担当者が毎日遡上を調査し、これまでに3段まで上がったところを確認しているという”。祇王井川まで遡上するのが楽しみである。
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青い野洲川

草津から来た旧東海道が石部宿へ入る少し前、1号バイパスの高架橋をくぐったところである。宮川という小さな川の左岸を伝ってきた道がそこのところで左右が入れ替わって、道が右岸へ出る。橋の上に立てば真上に高架橋がかぶさってくるが、水平方向を見る分には何の関係もないという不思議な場所である。その橋の上から三上山が見えた。これも私としては初めての場所である。
すぐ目の前は宮川だが、その向こうを草津線が通っている。そして野洲川。まだ頭首工の範囲らしい。水がたっぷりある。行燈の首と電車のレールが重なったな。これは要注意。ここを修正し、左端に電車を入れて肌色の倉庫風の建物を隠したら、結構いい絵になるぞ。と悦にいっていて、?、おかしいぞ。国道はどこへ行った。バイパスは真上を通っているが旧い国道は野洲川沿いに頭首工の手前を通っているはず。ちょっと計算が合わないぞ。画像を拡大してみた。野洲川と見えたのはソーラー発電パネルだった。黙ってりゃワカラン話だったろうが。イヤハヤ。
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思いもかけず

きのうの続き。宮川沿いの旧東海道を歩く。道沿いに家一軒分ぐらいの空き地があり、そこから石段が堤防に続いていた。これはひょっとしてと上ってみた。川の写真を撮るのが目的だったが、思いもかけず曲がり行く川の向こうに三上山が見えた。まさに意表をつかれた思いだった。宮川は野洲川流域の分水嶺を訪ねるについて、初めて意識した川である。もちろんいままで名前すら知らなかったし、ここに立つことなど考えても見ないことだった。
こんなところから三上山が見えたのかと、最初の1枚を撮ったとき、急に足元のヨシ陰で羽音がして、青サギが1羽飛び出した。あんなに注意深いアオサギがどうして?、シャッター音を聞いて飛び出したのではないかと疑いたくなるぐらいの距離感だった。とりあえずの1枚。こちらも慌てたから三上山はアウト。体勢を立て直して、三上山と一緒に収まったのが標題写真である。
さて、落ち着いてみるとこの初めての風景、右の山は何山か。連続して見ている場合は、それぞれのつながりがあるからとまどいはないが、今回はほんのちょっととはいえ、風景の空白があった。幸い堤防に後退する余裕があった。そして見た全体像。その姿は遠近感に多少の違いはあるが、出発時に石部頭首工岸から見た菩提寺山の姿に一致していた。
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旧い記憶

石部の写真をもう少し。宮川に視点を定めているのだが、部分的に道がはっきりしない部分もあって、一部旧東海道を歩く。不思議なモノで、何回も来ているわけではないが、こういう性格がはっきりしている風景は記憶に残っているものである。このときも以前、あいあい滋賀に掲載した写真を思いだした。しかしその場所が分からない。あの時は三上山を前に見る向きにクルマで来た。今は逆向きに歩いている。同じ道でも歩く向きが逆だと全く別の道に見える。
こういう道歩きをやろうとすると、クルマをしかるべきところを置いて、必要な距離を往復することになる。一見無駄なようだけど、思わぬ収穫に出くわすことがある。このときもそうだった同じ場所へ戻ってきたとき、あの時の撮影ポイントはにここだったと思える場所が見つかった。帰ってから昔の写真(2008年5月撮影)を引っ張り出して確かめてみた。あとほんの少し右へ寄っていたら、どんピシャリの位置だった。
昨日撮った写真でも忘れてしまうのがほとんどなのに、どうしてこの古い写真を憶えていたのだろう。記憶のメカニズムの不思議さである。
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それが何ですねや

続きに電車をもう1枚。場所は石部頭首工の近く。こんなところで電車と三上山が一緒なるなど今のいままで考えても見ないことだった。最近、石部へ通っている。2012年12月から始めた野洲川流域分水嶺峠探訪、人様の反応は何もないが、この「歩き」は自分なりに結構楽しい。最初こんなことをやりだして、完結できるのかと怪しんだ。未完で終わるであろう確率は日に日に上がりつつあるが、とにもかくにもほぼ4年がかりで野洲川大橋から北周りで武平峠までを訪ね終えた。最初は右回りでそのまま続けようと考えていたが、急に考えが変わってもう一度野洲川大橋(国道8号)へ戻って、そこから南回り(左回り)で鈴鹿峠を目指すことにした。その過程での石部である。
標題写真は草津線の電車が、石部頭首工近くへ流入する宮川という小さな川を渡るところである。実はこの場所を最初は「宮川を遡る」というテーマで、野洲川の方から山の方へ向かって歩いた。これがそのときの写真である。変わりばえしない、”それが何ですねや”という写真である。
帰りもう一度ここを通った。時間が合いそうだったので、反対向きから撮ることにした。思いもかけず、そこに三上山が入ってきた。電線にかけられた黄色い被覆が見えたりするが、初めて見える構図だった。石部頭首工のすぐ近く。そこまでは何度も行っていたのだが、100mちょっと離れたここは初めてだった。地図はあくまで参考資料、写真は歩いてナンボである。”それが何ですねや”という写真に変わりはないが。
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一年周期

野洲市上屋の農地からもう1枚。昨日の写真を撮った場所から三上山を正面に見て300mほど左へ移動したところである。JR琵琶湖線から150mほど離れた場所で、農道沿いにススキが群生している。実は昨日の写真を撮ったのが昼過ぎで、その続きに撮った写真がある。夏ほどではないが、太陽は高く民家の屋根は光っているけれど、電車はほとんど陰になっていて存在感はない。まさかこれを使うわけにはいかないから、夕方もう一度行ってみたのが標題写真である。
当然のことだが、夕日の穂が赤い。本当は白く光る穂がほしいのだが、それは仕方がない。想定外だったのが太陽の位置。下り電車に対して斜め前からの光で、電車の側面が輝くだろうと予測したのだが、実際には電車の前面を真正面から照らす(運転手からすれば太陽を真正面に見る)だけ、側面は画面右の2,3両がわずかに光る程度である。午後4時過ぎ、日没の30分ほど前でこれである。
太陽はこのあと冬至までさらに左へ移動していくわけだから、今年はもうおわり。来年、ススキの穂が出るのが9月として、秋もできるだけ早い時期の夕方が狙い目だ。ことほど左様に写真は1年周期である。
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うかつだった

うかつだったなーと思う。この風景にどうして気づかなかったのかと。それもチャンスがなかったわけではないのに。場所はコミセンぎおうの近く。写真教室でここへ通いだして今年で11年になる。場所は祇王小学校すぐ近くである。その校舎が立ちはだかってこれはダメだと思い込んだ。以来、この風景があることに気がつかなかったのである。祇王小学校・コミセンぎおうはこの画面すぐ右、距離にして200m余りのところにある。写っている住宅地はここ数年の間に開かれたもの。すくなくとも教室へ通いだしたころには何も建っていなかったはず。これを見逃していたのである。
そしてさらにこの風景は、山の組み合わせが、野洲市辻町・野洲図書館の近く、新幹線と在来線電車基地との間の農地から見るのと同じなのである。左に田中山、右に妙光寺山、その向こうから三上山が上半身を見せるという構図。住宅がなかったころは、その向こうを走る在来線の電車がアクセントになったはず。その風景を撮っておきたかった。残念。
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