2015年12月14日
オバアちゃんは一人で

30数年前、1回目の個展を開いたとき、見に来てくださった一人が「石寺からも見えますよ」。その一言がいまだに記憶に残っている。そのとき私は、近江平野のどこかに「石寺」という寺があるのだと受け取った。石寺てどこだろう。帰って地図で調べてみた。安土の近くに石寺という地名はあるが、探すお寺は見つからない。ついそのままになってしまった。その後、例の観音正寺なども地名は石寺であることを知り、ここらのことを意味していたのかと納得した。
国道8号を北上し、奥石神社のはずれから左へ折れて、最近とみに有名になった教林坊の方へ向かう広い道がある。その道がまっすぐ石寺の集落にぶつかって、一直線の里道が観音正寺への石段につながる。その集落のはずれから山に入る境が気になりだした。山に入ってしまえば無理だろうけど、民家が尽きるあたり、標高も結構高い。ひょっとして・・・。教林坊の紅葉ブームが下火になったある日、ものは試しと行ってみた。こそ泥よろしく、人サマの畑へ無断で侵入して、見えたのはこんな風景だった。アップしてもこんな程度。これでは何ぼなんでも無理だ。
引き返す途中、中年の女性が一人上ってきた。上を指さして「観音正寺はこちらですか?」、「そうです、ボクは途中で引き返してきましたけど」。石段に根を上げた意気地ないオジイに見えただろう。まさか三上山を撮りに来ましたとは言えないし。でもあのアバちゃんこれから登るのかなー。
標題写真はそのあと広い道に戻ってから撮ったやけくその1枚。オバちゃんは一人で山へ、オバアちゃんは一人で畑仕事。オジイは一人で三上山探し。人生孤独がいいのです。
写真ステージ 「近江富士」
■近江非名所全集
■滋賀を歩けば


Posted by 八田正文 at 09:32│Comments(0)
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