透明な山

好天も3日続くと、空気の透明感が落ちてくる。昨日(11月3日)、10時少し前、淡い朝もやの中に立つ三上山。山腹一面透けて見えるようなライトブルー。その昔、あれは昭和30年代の初めだったか。カメラ雑誌で見たススキを前景とした浅間山の透明感が忘れられない。撮影は田淵行男氏。小説の題ではないが、まさに”限りなく透明に近いブルー”。もっともそのころには、こんな言葉はなかったが。しかし、山が限りなく周囲の空気と同化すると山は透明になる。
ここにススキがほしいのだが、いくら探してもそれは見当たらない。ましてやバイパスが通ったあとは工場が移転してくるという土地。そんな情緒はどこにもない。諦めての帰り道、ふと思う、あれは本当にカラーだったのかと。いまから50年以上も前、カラー写真がまだ一般化する以前の話。モノクロームが、いつの間にか私の頭の中でカラーに転換されていたのかもしれない。
写真ステージ 「近江富士」
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