一刻一点

琵琶湖大橋南橋の西端(堅田側)歩道上からである。橋をくぐる里道から階段がついている。曇っていたから何とかごまかして撮れたけれど、好天だったら建物がけばけばしくて撮れなかっただろう。と考えてみると、これらの建物がなかったころが懐かしい。たとえばこの写真。いままで何度も見てもらったものだけれど、1978年1月の撮影。高層建築は1つもない。いまの米プラザの前身の建物の2階のテラスから撮ったものだった。ちょっと足を伸ばせば標題写真の場所など、橋は1本だったからもっと簡単に行けたはず。しかし、一か所で撮れればそれでよし、そこらを歩いてみようかということはやったことがなかった。
なぜそう考えるようになったのか。理由はいろいろあるが、そのころ”一日中で最高のシャッターチャンスは1回しかない”と考えていた。そのチャンスをある場所で使ったとすると、あとはいくら場所を変えてもその日の最高の条件では撮れないことになる。それならやっても無駄だ。だから(撮影場所の)ハシゴはしない。そう決めていた。いま考えるとけったいな理屈だが、その時は本当にそう考えていた。一刻、一点、自分の意識をあえてそこへ追い込む、そんな気持ちだったのだろう。
写真ステージ 「近江富士」
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