かがやかない稲田

名神・八日市ICから東近江市大森町をへて平林町へ抜ける。といってもお分かりにならないかもしれない。石搭寺のある丘陵を越えて西側の農地へ出たところである。平地へ下るちょっと手前に農業用水池がある。ほんのわずかな高みだけれど、その高さがものを言う。展望が効かない山の中を抜けてきた目にはあっと息をのむ広さである。西に傾きかけた太陽に照らされた黄色い田んぼが輝いていた。離合が困難な農道を勤め帰りのクルマが連なってくる。
田んぼの色に魅かれて車を降りたけれども目で見たあの色は出なかった。これは同じ場所から撮った落日(1995年10月6日)である。これも『近江富士遊々』に収録したが、これは太陽そのものにこだわって望遠で狙った。山はシルエット、手前のススキだけが光を受けているという絵である。いまとなってはきょうの標題写真と同じ場所であるという証明はまず無理。私の記憶だけの世界である。
構図はともかくとして露出はどうしていたのかな。当時はもちろんフィルムだったから、スポット露出計で、太陽からちょっと離れた場所の露出を測って…ということだったかな。”ちょっと離れた”てどれぐらいか。そうそうそれそれ、いわく言い難いのだけど、太陽の直径の数倍のあたりだったかな。それに比べると今日の露出は難しかった。稲田が目で見た色には上がらない。ホワイトバランス、コントラスト・・・そんなことをやっていたら、太陽が沈んでしまう。降参。大事なのはいざということのために経験の蓄積だ。
露出によっては右端の鏡山の左に比叡山が見えるのだが、標題写真ではそれが出なかった。いやいやとにかく難しい。
写真ステージ 「近江富士」
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