ビルが消えた

左の写真は、きのうの標題写真と同じ近江富士大橋の左岸畔で撮ったものである。ビルが消えた、これでここからもまともな写真になると、意気揚々と撮って帰った。そのあとで、ビルが建っていたころの写真がなければ話にならないことに気がついた。「昔ここにビルがあったんや」ではアカンのである。
その昔、私が三上山の写真を撮り出したころ、大津市衣川に建設途中で放棄された大きなホテルがあった。コンクリートの枠組みだけができた時点で工事中断、そのまま放置されていた。人呼んで幽霊ビル。国道を通るたんびに邪魔やなーと顔をしかめていた。結局その姿は私のフィルムにはない。今となっては写しておくべきだったと悔やまれる。
しまった、また同じ失敗をした。写真を撮る立場からするとビルは邪魔ものである。邪魔なものは画面に入れない。ビルがあることがわかっていてそれを撮ることはない。今回も、ビルが外覆シートで覆われたことは知っていた。まさかビルが壊されるとは思わないから、塗装のやり直しかぐらいに思っていた。ある日、ビルが半分ぐらい消えてなくなっているのが見えた。「へー、壊すん」かと思っただけで、それを撮ろうとは思いつかなかった。不覚だった。
これでかつてのビルの写真がなければ意味はない。邪魔なものは写さない、その邪魔なものを探そうというのである。そして見つけ出したのが昨日の写真というわけである。
写真ステージ 「近江富士」
■近江非名所全集
■滋賀を歩けば

