耄碌ジジイ事件簿

野洲市比留田にある石材店。名前はおぼえたつもりだったが、結局は忘れてしまった。そこの石置き場へ農道から4,5mほど入ると錦織寺を遠景としたいい絵が作れる。水田が美しいだろうと行ってみたが、一番近い田んぼには麦が植わっていた。仕方がないかとカメラを構えたとき、軽トラの音が近づいてきて数mほどのところに止まった。よそ様の敷地に無断侵入しているのだから知らん顔はできない。頭を下げると相手の若者は「石ですか?」。どこかの年寄りが石を物色に来たものと勘違いしたらしい。
「すんません、ちょっと写真撮らせてください」。若者は近寄ってきて、「どの石ですか」。そらそうだわな、石置き場へ入ってきて写真を撮らせろというのだから、石の写真だと思うのは当たり前。商談を始めようという気配である。「いえ、石と違いますねん。山ですねん」。後で考えたらけったいな話。石置き場へ勝手に入ってきて、写真を撮らせろという。石の写真を撮るのかと思えば、そうじゃない山だという。こんなもうろく爺さんを相手にしとれるかと思ったのだろう。元へ戻って仕事を始めた。
こうなるとなんとなく落ち着かない。1枚だけ撮って早々に退散した。「すみません、ありがとうございました」、「はい、どうも」。手前の農道と余計な草地。締まりのなさはその表れである。いつものことだけれども。
写真ステージ 「近江富士」
■近江非名所全集
■滋賀を歩けば

