森の小径

水蓮の池を越えて森の中へ入る。細い道が続いている。道は暗くなりハス群生地が明るい。ふと湖面を見るとどこからともなく飛んできたカラスだったかトンビだったか。そのときは見極められたはずだが、いまとなっては写真だけでは心もとない。
人工の小さい森だが、それでも木が茂ると見通しはきかない。そんな道をたどりながら高校生のころに覚えた『森の小径』を思いだした。
1 ほろほろこぼれる 白い花を
うけて泣いていた 愛らしいあなたよ
2 憶えているかい 森の小径
僕もかなしくて 青い空仰いだ
3 なんにも言わずに いつか寄せた
ちいさな肩だった 白い花夢かよ
灰田勝彦が歌っていた。休み時間に誰かが、この歌を万葉集のように全部漢字で黒板に書きだした。もちろんこれが万葉集にあるわけはなく、勝手な漢字を並べただけだったけど、それでこの歌を覚えた。そんなことで戦後の歌だと思っていたが、調べてみると昭和15年の歌だという。そんなことが思いだされるのに、カラスだったかトンビだったが思い出せない。難儀なものだ。
写真ステージ 「近江富士」
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