残った桜

すでに何度もレポートしてきた三上の祠のそばにあった桜の木、いまは細い小川のそばに残されている。きれいな山桜でいまから30年ほど前だったろうか。ときどき吹き来る風に花吹雪が飛び来るのに出会った。もちろんフィルム時代、カメラにはASA100(ISO100)のフィルムが入っていた。風が吹くのを待って何度かシャッターを切った。いまと違って結果をその場で見ることはできない。現像が上がってきたフィルムには画面一面にごみが散らばっていた。花びらが流れて写るのを想定したが、全部止まって写っていた。明るかった春の日、スローシャッターが切れなかったのである。
2年ほど前、祠も垣根も取り払われこの木だけが残された。木はツルにまかれて弱っていた。復活を期待した。去年はちらほらと花が咲いた。しかし、今年の春は全く駄目だった。いつかこの木も切り取られるのではないか。そんな予感がする。切り取られる前の1枚。いわゆる定位置から撮りたかったが、イネが実りかけたこの時期、畦道に入るのは躊躇した。もう1枚、これも定位置ではない。いつもより後方の道路からである。
写真ステージ 「近江富士」
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