古武士追悼

昨日見てもらった写真と同じ構図である。撮影日も同じ。1991年4月14日。ただし撮影時刻が違う。私は1994年に定年退職した。現域時代、桜の撮影は難しかった。開花期間中におそらく1回しかない日曜日が好天であるという条件が必要になる。この年は開花が遅く、4月14日がその貴重な日だった。
午前中から撮影に出かけ、工事中の大山川沿いの場所にすっくと立つこの木を見つけた。初めて見る桜だった。それまではどうなっていたのか。おそらく周囲を木々に囲まれ、その姿を見ることができなかったのだろう。大山川の改修工事がなかったら、おそらく人目につかず一生を終えたのではなかったか。午前中のそのときは新しい盛土がけばけばしく、シャッターは切ったが満足はできなかった。午後夕日が背後に回るのを待って、改めて撮ったのが昨日の写真である。
今回この文章を書くにあたって、南桜・北桜周辺で撮ったフィルムを全部確かめてみた。この日以前にこの木の姿は記録されていなかった。あとで詳述するが、この桜は大山川の右岸に立っている。だから左岸(対岸)からワイドで撮るか望遠で撮るか、それとも標題写真のように、右岸からワイドで撮るかの三種類しかない。撮影距離が限定される。その中間の距離はあり得ない。ちなみにこれが現在の対岸からの様子である。当然、木はない。画面中央を横切る右下がりの稜線上に切り株が見える。下に見える大きな斑点ではない。右下に見えるコンクリートのでっぱりが、いつもの撮影位置だった。
写真ステージ 「近江富士」
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