罪深い話

写っているのは川田大橋右岸畔から竹生交差点近くまでをつなぐ道路。新しく開かれたリバーサイドタウンへの進入路も兼ねている。そういう意味で出来上がってしまうと新しい住宅地をまくように走るイメージになるが、もう少し以前の地形を思い起こすと旧野洲川北流をほぼ直角に横断しているともいえる。ガードレールの外側、少し高い道路が新放水路の右岸堤防管理道路。住宅地が開発されるまでは画面右に見える堤防林が左端の竹藪まで続いていた。
あれはいつごろだったか、確か北流跡をレポートしていた時だったからもう5年ほども前の暑い時期だった。森の中から出てきた若い男性に声をかけられた。
「今度このあたりが住宅地になるというので、樹木の伐採が始まっている。この森にはカタツムリがたくさんいて、品種としても珍しいものだ。このままにしておくと全滅するので、どこかへ移動させてやるのだ」
と段ボールの箱を見せてくれた。何匹いたか勘定はしなかったが、とにかくかなりの数だった。どこへ運ぶかはきっちり聞かなかったが、確か石部のどこかの森だといっていた。その後一週間ほどして、またその男性に出会った。きのう見てもらった旧北流堤防跡の凸凹道だった。にこっと笑ったその手には同じ段ボール箱があった。このオトコ、本気やなと思った。カタツムリは石部で安住の地を見つけたのだろうか。
新住民はこういう話は知らない。私が住んでいる住宅地には、以前たくさん蛇が住んでいたという。「あの蛇はどこへ行ったのやろう」と近所の古老。罪深い話である。
写真ステージ 「近江富士」
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