瀕死の風景

野洲市三上の農地、背後すぐ頭の上が新幹線である。写っている1本道は、私が数学のY軸に例える農道。それに対して、遠くの集落までの中ほどに左右に横切る農道がある。それがX軸。その交点付近を左奥から右手前へ、8号バイパスが通工事中。いま立っているこの場所は工業団地になるとかで、一時地質調査などが行われていたが、この半年はそのままに放置され、鳥と虫の天国になっている。
いつだったか、バイパス予定地で行われている埋蔵文化財発掘調査の様子を見ようと農道を歩いたら、20mほど先からケリが飛び立った。最初は2,3羽、いつもの様子で驚きもしなかったが、そのあとから続くつづく、きっちり勘定できなかったが、10羽は間違いなかっただろう。数年先にはバイパスが風景をふさぎ、ケリの天国には工場が建つ。この風景は消え去る。まさに瀕死の風景である。
しかし、よく考えてみると50年前には新幹線が風景を塞ぎ、120年前には東海道線もまた。そして我が家も。大きなことは言うまい。
写真ステージ 「近江富士」
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